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第11話 「捜索開始」










以前斡旋所に集まった1ヶ月後、悠司は再びレオンから連絡を受けた。
どうやらここ一月あの事件と同じような、魔物による原因不明の襲撃が何件か起きているようだ。
それにより被害が増えた各都市は、それぞれのギルドと連携して犯人を捜し出すこととなった。
ガルサースのギルドを当面の作戦本部として、そこに今参加メンバーが集まっている。
レオンはその人員を集めているらしい。
足が完治した悠司は、そのメンバーの一人に誘われている。

「おれ荒事はできるだけしたくないんだけど」
「まぁお前がそういうの苦手だってわかってるけどな、お前より強そうな奴ってそうそう見つからねぇんだわ」

顔をしかめて嫌そうに言う悠司。
それに申し訳なさそうな表情でレオンは頼みこむ。

「お前が来ないとなると、あのシスターくらいしかもう頼める相手がいないんだよな」
「アネットさんに?」

悠司が来られないのならアネットを誘うしかないと言うレオン。
たしかにアネットならば悠司の代わりは十分務まるだろう。
おそらく率先的に闘おうとしない悠司より、アネットの方が実践では役に立つ可能性がある。

「ああ、もうオレを含めて4人は決まってるんだけどな。できればあと1人は強い奴が欲しい」

他の町からもメンバーは集まるが、それに頼るわけにもいかない。
できれば同じ町の実力がわかっていて、いざというときに頼れるメンバーを集めたいと言うレオン。
さすがにアネットを行かせるわけにもいかないと、悠司は渋々ながらも納得する。

「ん〜……わかった。あんまり気がのらないけど」
「よし、サンキュウ! お前が直接闘うと決まったわけじゃないし、適当にやってくれりゃいい」
「ああ、そうさせてもらう」

あくまで乗り気でない悠司にレオンは苦笑いをする。
レオンはとりあえず目的の人物を勧誘でき満足そうだ。
二人は集合場所ギルドへと向かって歩いていった。





悠司とレオンがギルドに到着し中にはいると、そこには既に十数人のメンバーが集り座っていた。
どうやら彼らが最後だったらしい。
とりあえず空いている席に座る二人。
彼らが席に着くと、中心にいる責任者らしい短い黒髪を立てた40ほどの男が口を開く。

「皆よく集まってくれた、私はこの任務の責任者となったアスタスという者だ。一応三つ星を持っている」

三ツ星とはギルド内における階級のようなものだ。
星無しから最大で五つ星まであり、四つ星からはギルドを経営することができる。
星は一定基準の戦闘能力を認めさせるか、功績をあげるとそれに見合ったものが与えられる。
ちなみにそれぞれの大体の比率は、無しが50%、一つが28%、二つが12%、三つが7%、四つが2.7%、五つが0.3%ほどだ。
なので三つ星はかなりの実力者といえる。

「とりあえず初めて会う者も多いだろうから自己紹介をしてもらおう」

アスタスの言葉に、その隣にいる弓を背負った赤銅色の髪をした男が口を開く。

「フリオだ、二つ星で今回の副責任者となっている」

彼はそう言ったきり口を閉ざす。
どうやら寡黙な人物らしい。
次にその隣に並んでいる、二人の人狼の男女が喋る。

「あたしはクレア、でこっちが」
「グレイだ」
「あたし達は姉弟で、二人とも一つ星さ」

まず女性が名乗り、その後男性に親指を向けると彼が名乗る。
二人とも大柄で、特に弟の方は体中傷だらけで荒くれ者らしい人相をしていた。
そうして順番に自己紹介していくと最後に悠司とレオンの番になる。

「レオンだ、ギルド員ではないがよろしく頼む」
「悠司といいます。同じくギルド員ではないけど、どうぞよろしく」

二人がそういうと、参加者の一人が突っかかってくる。

「おいおい、ギルド員じゃないのがいんのかよ! つーかレオンとかいう男はともかく、そっちのあんちゃんは戦えんのか?」

馬鹿にしたように男は言った。
普通ギルドで仕事を受ける者はギルド員として登録をする。
適性検査や簡単な試験を受け、受けたギルドで登録をすます。
登録をした者には、ギルドから情報の提供など階級に応じた支援を受けることができる。
ギルドに登録するということは、危険なことをする覚悟があり、それを行えるだけの力があるのを示すことにつながるのだ。

ギルドで仕事を受けるのに必ずしも登録をする必要はないが、登録してない者には大した仕事が回ってこない。
登録してないということは、何も示していないということなのだ。
なので男が悠司達を馬鹿にするのはそうおかしなことではない。
他の者も大なり小なり同じ気持ちなのか、大半が同じような視線を二人へ向けている。
そこへ取りなすようにアスタスが声をかける。

「まぁここに来ているということはそれなりに自信があるということなのだろう。それにその二人は最初の襲撃事件の当事者らしいからな」
「ああ、そいつらの強さは俺が保証するぞ」

アスタスの言葉に、二人を知っているガルサースのギルド員の一人が声をあげた。
それに納得したのかわからないが、男は黙り周りもこちらから視線を外す。

「これで顔合わせは終わったな。では本題へ入ろう」

アスタスはそういうと一枚の地図を机の中央へ乗せる。
全員それを見ようと身を乗り出す。
それはここ周辺の地図で、事件が起こった場所には赤く印がついていた。

「初めに起こったのはここだ」

そう言いガルサースとカールトンの間の街道を指すアスタス。

「これ以外でここ1ヶ月で起こった数は11件。ガルサースで2件、カールトンで3件、スリカロノアで2件、バクカイトで4件」

トントンと印がついた地点を指す。
スリカロノアとバクカイトは、それぞれガルサースから真北と北西に位置する。
それぞれの都市はおおよそ綺麗な菱形の点になるよう並んでいる。

「起こった場所から大体同じ距離に位置するのはここだ」

そう言って菱形の中心をアスタスは指す。
それにレオンはなにか気づいてような声を出した。

「そこはたしか……」
「そう。旧ヤッキマ王国の王城跡がある」

ヤッキマ王国とは今から約600年ほど前に滅んだ人間の王国の名称である。
400年続いたその王国は、かつて人体実験をして、生物兵器を開発していたと伝えられている。
そのことを知った国民は怒り、周辺に住む他の民族と結託して王家を滅ぼした。
その後他の民族と連合して建てたのがジュヌブス連邦である。

現在ジュヌブス連邦が持つ領地のほぼ半分の広さがあり、今回名前の出た4つの都市は全て、旧ヤッキマ王国領の中に入っている。
その王城の跡地が丁度菱形の中心に存在している。
事件の範囲から見ておそらくそこに犯人は潜んでいるだろうと言うアスタス。

「では今後の方針を決めよう」

方針といってもこのメンバーは全員が顔見知りというわけではないので、まとまった行動がとれるはずもない。
そもそもギルド員というのは腕自慢が多いため我が強い者ばかりで、頻繁にチームを組んでいる者以外チームプレイというのが苦手である。
とりあえず目的地へ出向き、そこで各自行動するしかないだろう。
案の定今回も集合だけはして、王城跡についたら各自の判断で動くことになった。
集合時間と場所は明日の朝8時にガルサースの出口とだけ決め、その日は解散することになる。

















次の日リリーと、もはや朝から家にいることが当然のようになっているユーリィに見送られ、悠司は集合場所へ出向いた。
悠司がそこに着いたときはまだ数人しかそろっていない。
しばらく待ちそうだと判断した悠司は、少し離れたところで腰を下ろす。
悠司がそこでボーっとしていると、後ろから声がかけられた。

「おう、兄ちゃんよ、大丈夫かい?」

その声に反応して振り向く悠司。
そこには人狼の弟、グレイが立っていた。
彼は大きなハルバートを背負っている。
ニヤニヤとしながらこちらを見ている彼に、悠司は気楽に返す。

「ああ、大丈夫だよ。グレイっていったっけ?」
「てめぇ誰が呼び捨てにしていいって……いてぇ!」

悠司に因縁をつけようとしたグレイの頭が後ろから叩かれる。
グレイの後ろには彼の姉のクレアが呆れたような顔をして立っていた。
彼女の背にはグレイブがある。
後ろを向き彼女に文句を言うグレイ。

「何すんだ姉貴!」
「変なイチャモンつけようとするんじゃないよ、この馬鹿」

文句を言うグレイを叱りつけるクレア。
彼女は悠司の方を向き申し訳なさそうな顔をする。

「悪かったね、この馬鹿が迷惑かけて」
「別に構わないよ、クレアさんでよかったかな?」
「呼び捨てでいいよ、これもね。あんたはユージだったっけ?」
「ああ、よろしく」

女性ということもあり敬称をつけて名前を確認する悠司。
それにクレアはヒラヒラと手を振り返す。
これ呼ばわりされたグレイは彼女の後ろで不満そうに立っている。
悠司の名前を確認するクレアに返事をし、簡単に挨拶する。

「こっちこそよろしく。ほらグレイ、行くよ」
「ユージっつったな、覚えてやが……だからいてぇって姉貴!」
「あんたが下らないこと言おうとするからだろが」

挨拶を返しグレイと連れだって離れていくクレア。
グレイは離れ際に捨て台詞を言おうとして、またクレアに叩かれた。
そんな二人を面白そうに眺めていると、また後ろから声がかけられる。

「おうユージ、おはようさん」

こんな短時間に二度も後ろから声をかけられるのは珍しい、と考えながら振り向くと、そこにはレオンがいた。
彼は両腰に一つずつ剣をつけている。
とりあえず挨拶を返す。

「おはようレオン」
「もうすぐ行くみたいだぞ」

レオンの言葉に辺りを見回すと、昨日のメンバーがそろっていた。
どうやら人狼姉弟と話している内にそこそこ時間が経っていたらしい。
少々離れたところにアスタスとフリオが並び、面々の確認をしていた。
どうやら全員そろっていたらしく、一つ頷くと声をかけるアスタス。

「ではこれより向かうとする。向こうに着くまではできるだけ個人行動はしないようにしてくれ」

そういうとアスタスは町の外へと向かい歩いていく。
フリオがそれに続き、さらに他の者もそれについていった。
目指すは犯人の隠れ家とおぼしき場所。
旧ヤッキマ王国王城跡。


















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