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第3話 「少女発見」










ユーリィと買い物へ出かけた3日後。
悠司は朝から町はずれの洋館の前へと来ていた。
お仕事である。
彼の横にはニワトリの頭をした男がいる。
そんな見た目でもこの町の役所の人、公務員だ。
今回の仕事は役所からの依頼。

「……というわけで、よろしく」
「はい、わかりました」

ニワトリ男が事情を説明する。
悠司はそれに対し洋館を見たまま返事をする。
ニワトリ男を見ようとしない。
なぜならニワトリって怖い。
あまり直視したくない見た目をしている。

今回の依頼の経緯はこうだ。
元々この洋館はある錬金術師が20年ほど前に建てたもの。
その錬金術師は約2年前に何かを探しに旅へ出た。
ところが今から3ヶ月前、その錬金術師の訃報が役所へ届いた。
所用者がいなくなった館をどうするか役所は考える。
とりあえず親類縁者がいないか調べてみたが、どうやらその男は天涯孤独だったらしい。
それならば早く何とかしなければ、他の錬金術師などがやってきて、家捜しされてしまうかもしれない。

「錬金術師ってやつは知識の探求者って自称しててな。他の術師の研究成果をのぞき込もうとするやつもいるらしい」

ニワトリ男はそういって苦笑いした。
そういうわけで何とかしなければならないのだが、ここは術師の館である。
大概の術師は自分の陣地には何かしらの警報装置や罠を仕掛けているものだ。
役所にもこういうことの専門家が一人や二人いるものだが、あいにく今は別件で出払ってしまっている。
そういう場合は外部の機関に派遣を頼むのだが、これがそれなりに値段が張る。
そこで悠司の出番である。

異常身体機能絶賛持続中の悠司。
異様なタフネスを誇る彼は抗術性能も高レベルである。
ユーリィとの初対面時、彼女が唱えた術はそれなりに広範囲の術であり、実は悠司も効果範囲に入っていた。
普通の人間なら熊と一緒に吹き飛び崖下へ真っ逆さまである。
しかし悠司は何事もなかったかのようにそこへ立っていた。
後々そんな話をユーリィから聞いた彼は、そんな術をあんな場面で唱えたのか、と彼女に詰め寄った。

「ご、ごめんなさい! あの時は慌ててたから!」

そういっておたつく彼女はなかなか良かった。
そういうことで、物理的もの術的なもの両面で対応できる悠司にお鉢が回ってきた。

「じゃあ終わったら連絡よろしく」

ニワトリ男は片手を上げて去っていく。
一人残る悠司へ、二人の会話を少し離れているところで聞いていた女性が話しかける。

「で、なんで私は呼ばれたの?」

金髪碧眼の女性、ユーリィだ。
彼女は朝早くから、理由も教えられずにここへ連れてこられた。
多少不機嫌なご様子。

「いや、おれ錬金術のことなんてさっぱりだから。アドバイザーが欲しいな、と」
「私は精霊術師よ、そんな詳しいことわからないわ」

そっぽを向きながら答えるユーリィ。

「大体でいいんだよ。お礼はするんで、お願いします」
「……んもう、わかったわよ。ちゃんとお礼は貰うからね?」

頭を下げる悠司に、ユーリィはしょうがなさそうに答える。
ありがとう、といいながら頭を上げる悠司。
二人は館へ向かい歩き出す。

「で、何をすればいいの?」
「ちょっと待って……っしょっと」

悠司は館の扉を無造作に開ける。
それに慌てるユーリィ。

「ちょ、ちょっと! そんな適当にやって大丈夫なの!?」
「大丈夫大丈夫」

手をヒラヒラさせながら悠司は館へ入っていく。
後を追うユーリィ。
玄関から入ったそこは、それなりの広さを持つホールになっていた。
貴族の屋敷ほどではないが、一般市民がもつには広いといえる。
どうやらここの持ち主であった錬金術師は、なかなかの金持ちであったらしい。
ホールの中央あたりまで入り、悠司はユーリィへ話しかける。

「ユーリィ。とりあえずここから大雑把に全体を調べてみてくれる?」
「え? ええ、わかったわ」

ホールを見渡していた彼女は悠司の声に反応して我に返る。
彼女は目を瞑ると、手のひらを上に向け両手を胸あたりまで持ち上げ、少しの間じっとする。
そのうち体がぼうっと光り、彼女の周りを光りの粒子が飛び回る。
粒子の数が増え、それが屋敷中に散らばる。
5分ほどそうしていると、彼女は目を開け悠司へ声をかける。

「いくつか反応はあったけど、屋敷自体は大丈夫そうよ。入れさせないための術はかけてあるでしょうけど、攻撃的なものは無いみたい」
「ん、わかった。ありがとう」
「どういたしまして」
「じゃあ上からいって、順に下へ降りていこうか」

そういい二人はホールの端にある階段へ向かう。

















順繰りに部屋を巡る二人。
ドアに鍵がかけてあれば、それが術的なものならユーリィが解除し、物理的なものなら悠司が壊す。
部屋を漁り怪しげな薬品や器具を見付けたら外へ運び出す。
それを後で役所の業者が回収し処分するのだ。
一通り終わり、最初の玄関ホールへ戻ってくる。

「んー、こんなもんかな」

体をほぐす悠司。
しかしユーリィはなにか考え込んでいる。
そんな彼女の様子に気づき声をかける。

「どしたの? ユーリィ」
「ええ……ちょっと一部屋気になる場所があったのよ」
「気になる場所?」

どこ? と悠司は問いかけるように目線を向ける。

「2階の書斎なんだけど……」

とりあえず行ってみることにする。
階段を上がり書斎へ入る。
悠司は部屋を見渡してみるが、何も変わった様子は見付けられない。

「何が気になるの?」
「うーん……何か覆うというか、隠すようにしてる力を感じるのよねぇ……」
「隠すようにねぇ……」

部屋を見渡す。
見た目にはわからない。
壁を触ったり叩いたりするがおかしなところはない。
悠司は本棚の前に立ち、本を一つ取り出そうとする。

「まさか本を取り出すと本棚が動くなんてベタな落ちは……」

カチリ、と音が鳴る。
そしてズズズと本棚が横へスライドし、そこへ地下に続く階段が現れる。

「……あったのか」

以外と世の中ベタベタなんだな、と一つ頷く悠司。
それに気づいたユーリィが駆け寄ってくる。

「これって……」
「うん。なんか、らしいよね」

驚くユーリィとなぜか納得した様子の悠司。

「ユーリィ、調べてみて」
「ええ……」

初めのように中の様子を調べるユーリィ。

「……よくわからないわ。うまく力が働かない……」

少々困惑気味なユーリィ。
悠司は腕を組み、少し考えると口を開く。

「……行ってみようか」
「大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫」

不安な顔をするユーリィに、悠司は気楽に返す。
とくに警戒した様子も見せずに悠司は階段を降りていく。
及び腰ながらもユーリィもそれに続く。
3階分ほど降りたところで階段が終わる。
辺りは薄暗く、1mほど先までしか見えない。
悠司が一歩踏み出すと、どのような仕掛けかわからないが明かりが灯る。
便利だな、と考えながら辺りを見回す。
幅1m半程の石造りの回廊が10mほど続き、突き当たりに扉が見える。
回廊の左側には3つ扉がある。

「すごい……遺跡かしら……」

ユーリィが驚いたように声を出す。
確かに遺跡だ、と悠司は思い、ユーリィへ声をかける。

「じゃあ見てみようか。おれは奥の部屋からしらべるから、ユーリィは手前の部屋からよろしく」
「え? ちょっと……」

戸惑った様子のユーリィを置いて、悠司は奥へ向かう。
突き当たりには両開きの大きな扉。
そこは鎖で封鎖されている。
あきらからに立入禁止である。
しかし悠司は全く気にせず鎖を引きちぎり、扉を開き中へはいる。
回廊と同じように一歩踏み込むと明かりが灯る。
そこには玄関ホールと同じ程度の空間が広がっていた。
部屋の中心には、高さ3m、幅1mほどの黒い筒状のものが設置され、その近くにはボタンやらディスプレイやらが沢山ついた機材が置かれていた。
あきらかに時代設定間違えてるだろ、とツッコミたくなるようなものに首を傾げながらも悠司はそれに近づく。
機材の前に立つとそれらを弄くってみる。
いくつかあるディスプレイの一つに触れると、ブンっと音が鳴り光りが灯る。
それに連動するように、他の部分も音を立て起動する。

「あ」

やっちゃったかなぁ、と考え手を引っ込める。
それでも機材の作動は止まらず、カチカチと音を立てている。
悠司はそれを眺めてみることにした。
2分ほど経つと音が鳴りやむ。
それと同時に中心の筒の黒いものが上へせり上がっていく。
どうやらなにか被せてあったようだ。
そうする内に中身が全て見えるようになった。
透明で大きなシリンダーがあり、それは薄い緑の液体に満たされ、その中に少女が一人浮かんでいた。
マッパである。
少しすると、ピピッと音が鳴り、液体が抜けだす。
液体が抜けきると、シリンダーもせり上がり、少女が外へ解放される。

「うむ」

ご苦労、とでもいうように頷く悠司。
白い髪を腰ほどまで伸ばした、16・7くらいの少女。
しばし少女を見ていると、パチリと目を開ける。
ゆっくりと頭を上げ悠司の方へその赤い目を向ける。
見つめ合う悠司と少女。
すると少女は立ち上がり、フラフラと悠司へ近づいてくる。
悠司の前まで来ると倒れ込むように抱きつく。
さすがにそれは予期していなかったのか、悠司は力を入れることができずにそのまま倒れ込む。

「特に何もなかったわ、ユージ。そっちはなにかあっ……」
「あ」

そこへタイミング悪くユーリィが入ってくる。
仰向けに倒れる悠司とそれに覆い被さる少女を見て固まる。
しばしの静寂。
ユーリィは無表情になりツカツカと悠司へ歩み寄る。
寝ころんだ悠司へ、少女に当たらないよう気をつけながら足を振り下ろす。
しかし悠司は上から植木鉢が落ちてきて頭に当たっても怪我をしないような男である。
むしろ蹴った方の足が痛い。

「〜〜〜っ……とにかく起きあがりなさい! ていうかその子裸じゃない! 上着よこしなさい! そして後ろを向け!」

振り下ろした足を押さえながらいうユーリィの言葉に従い、起きあがり後ろを向き上着を脱ぐ。
ユーリィはそれを受け取り少女に着せる。
少女は悠司の背中を見ながらされるがままである。

「はい、とりあえずいいわよ」
「ん」

ユーリィが声をかけ悠司は振り向く。
丈が悠司の腿の辺りまである上着は、少女の膝下までスッポリと被っていた。
ユーリィがため息をはきながら悠司に尋ねる。

「で、この子はどうしたの?」

その問いに対し悠司はありのまま起こったことを語った。

「あ、ありのまま今起こったことを「そういうのはいいから」

珍しく茶目っ気を出す悠司をバッサリと切り捨てるユーリィ。
それに若干ガッカリしたような顔をして、今度こそ起こったことを話し出した。




















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