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第16話 「見知った人」










王城跡地に着き、地下へ向かい回廊をぬけ扉の前へ。
同行者がいるため先ほど家へ向かったときより時間がかかり、4時間半ほど経過した。
扉を開け中へ入る。

中の光景は最後に見たときとさほど変わりない。
空のシリンダーと、奥には一段上がり2mほどの柱に囲まれた場所。
違うのは魔物の死体が無くなっていることと―――倒れている5人の姿。
3人はそれに駆け寄っていく。

「息はあります、気絶しているだけのようです」

5人を診察したアネットがそう言う。
2人はそれにホッと息を吐く。
アネットが5人へ治療術をかけていると、レオンが目を覚ました。
悠司が彼に近づき抱え上げ、声をかける。

「レオン、話せるか?」
「ああ……ユージか。体はあんまり動かせねぇが、喋る分には大丈夫だ」

悠司はレオンに何があったか尋ねる。
彼は悠司達が来る前に起こったことを話し出した。

















「どうしたんだ? ユージのやつ」

悠司が慌てて走り去っていった理由が分からず、首を傾げるレオン。
少し離れたところでは、まだラグが騒いでいた。
他の面々は彼が何のことを言っているのか分からず、顔を顰めている。

「まぁいい、とりあえず連れて行こう」

埒があかないと判断したアスタスがそう言い、ラグを無理矢理連れて行こうとする。
すると扉とは反対側、柱に囲まれた部分の手前の空間が揺らいだ。
アスタス達はまた魔物が出てくるのかと、武器を構える。
しかしそこに現れたのは一人の男。
その腕には白い少女が抱きかかえられていた。

「誰だあいつは?」

見たことのない人物の出現に、疑問を口にするフリオ。
男がこちらを見て驚いたような表情をつくり、声を発する。

「おや、君たちはなんだね? ラグ君、彼らは?」

声をかけられたラグは、一心に男の腕の中にいる少女を見ている。
そして急にそちらへ向かって駆けだした。
男に注意を払っていた面々はそれにハッとするが、既にラグは男の目の前まで行ってしまっている。

「おお、連れてきたのか! よくやってくれた!」
「多少予定外のことはあったがね」
「かまわん、これさえ手に入ればいいのだ」

非常に興奮するラグ。
無視されたされたかたちになった5人は状況がよく飲み込めない。
分かるのは、ラグとこの男は仲間のようで、あの少女が何者かわからないが、彼女はラグの目的であったようだ。
二人は少女を連れ奥へ向かって歩いていく。
それに慌ててアスタスが声をかける。

「待て!」

それに反応して二人は立ち止まり振り返る。
ラグは彼らがいたのを思いだし、面倒そうに手を払った。

「なんじゃ、貴様等まだいたのか? さっさと去ね」
「そう言われて去るものか、貴様は町へ連行する。そちらの男と少女は誰だ?」

その言葉にさらに面倒そうな顔をするラグ。
彼が何かを言おうとすると、男がそれを制し、少女をラグへ預ける。
そして一歩前へ出て言い放つ。

「片づけてしまえば早い、少し待っていたまえ」

その言葉にいきり立ったグレイが駆け出す。
男の目の前まで一気に行き、ハルバートを振り下ろした。
しかしそれは男の顔の前で止まり、いくら押そうとも動かない。
グレイは舌打ちして離れた。

「術師か……」

アスタスが苦々しげに呻いた。
男が右手を目の前に掲げる。
すると男の周囲に百にとどこうかという数の光球が浮かび上がった。
5人はその膨大な数に息をのむ。

「行け」

男がそう言い手を下ろすと、全ての光球が5人へ向かって放たれた。
それぞれ防御を固める。
しかしそれは、この圧倒的な数の前に意味をなさない。
光球の全てが放たれた後、残っていたのは地に伏す5人の姿だけであった。

「では行こうか」

男はそう言い振り返り、ラグと少女と共に、奥へと歩いていく。
レオンは薄れゆく意識の中、男達がどこへ向かうのかだけは目にとめようと、必死に気を失うのを耐えていた。

















「で、見たのか?」
「ああ」
「どこだ?」
「あの柱に囲まれているところ。その中心にしゃがみ込んで何かいじったと思ったら、沈んでいった」

悠司は頷きそちらへ向かっていく。
抱えていたレオンの頭を放したので、ゴンという音が聞こえたが気にしない。
中心部まで行きしゃがみ込むが、変わったように見受けられない。

「何してるんですか、ユージさん?」
「なんかあっちでレオンが泡ふいてたわよ?」

いつの間にかアネットとユーリィが近づいていた。
床に這いつくばっている悠司に声をかける。
悠司はレオンから聞いたことを二人に伝えた。
それを聞いた二人も床を捜し出す。

「ねぇこっち!」

しばらく探していると、ユーリィが何かを発見したらしく声をあげる。
悠司とアネットはそちらへ駆け寄り、ユーリィの手元をのぞき込む。
床の一部がスライドし、その中には数個ボタンがある。
アネットとユーリィには分からないことだが、悠司にはそれはエレベーターのボタンのように見えた。

「何でしょう、これ?」

アネットそれを見て不思議そうにする。
その横から悠司は手を出し、ボタンの一つを押してみた。
その行動に注意しようとユーリィが口を開こうとする―――が、急に床が動いたため驚き口を閉じる。
3人を囲むように、一辺が1m半ほどの正方形の形に床が沈み込む。

ユーリィとアネットはそれに驚くが、悠司は半ば予想していたためそう動じていない。
周りの壁が光り、辺りをほの暗く照らしている。
その中をゆっくりと降りていく。
普通の建物ならおよそ地下3階分ほど降りたところで動きは止まり、壁の一角が開いた。

目の前には3m四方程度の空間。
正面に扉が一つあるだけで、他には何もない。
3人はそこを出て目の前の扉を開けた。
その先は暗やみに包まれている。
しばらく3人が固まってじっとしていると、急に明かりがついた。

「これは……!」

周りを見渡したユーリィが驚きの声をあげた。
辺りには悠司の家の地下で見たような機材がある。

「ここは古代遺跡の一つ。転移装置なんだ」

驚いている悠司達に声がかけられた。
彼らの目の前にはいつの間にか現れた男が佇んでいる。

「あなた! リリーをどこへやったの!?」

それがリリーを連れ去った男だと気づき、ユーリィが声を荒げた。
男はそんな彼女を無視し、話を続ける。

「上の柱に囲まれた場所があるだろう? 君たちが入ってきたところだ。そこにあるものを転移させるんだね、ここはその制御室だ。この部屋にも小規模ではあるが上と同じ場所がある。まぁ今はラグ君が研究室として使っているけど」

男はそう言って後ろを指さす。
そこには彼が言ったように、小規模ではあるが上にあった空間と同じように、柱に囲まれた場所がある。
その手前には機材が置かれていた。
あれが操作盤なのだろう。
しかし3人の目を引いたのはそれらではなく、その上にいたもの。

「リリー!?」

そこには診察台のような物に寝かされたリリーの姿。
横にはラグが立っている。
3人はそちらへ駆け寄ろうとするが、男が立ちはだかり邪魔をした。

「退いて!」

ユーリィが男に退くように言うが、動く気配はない。
男が口を開く。

「久しぶりだね、悠司君」

その言葉にユーリィは悠司へ顔を向け尋ねる。

「あなたやっぱりこの男と知り合いなの?」
「いや、思い当たらない」

その問いかけに悠司は首を振る。
それを見た男は苦笑いをした。

「服装と髪を変えただけでも分からないものだね」

そう言うと男は来ているマントを脱ぐ。
下から現れたのは黒いスーツ。
そしてポケットから櫛を出すと、それで髪を整える。
すると髪が黒くなり、形はきっちりとした七三分けになった。

「あ……」

その姿を見た悠司が驚きに声をあげる。

「どうやら思い出してもらえたようだね」

悠司は確かに彼と知り合いだ。
少し前までは毎日あっている人物だった。
しかし悠司は困惑する。
彼がここにいるはずがない。
彼がここにいる理由が分からない。



ひょろりとした体つき。

黒いスーツ姿。

きっちりとした七三分け。

いつもの彼と違うのは、手には何も持っていないこと。



何故彼がここにいるのか分からない悠司は、確かめるように口を開く。










「太郎、さん……?」



―――――田中太郎がそこにいた。




















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