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その1


時はブリミル暦xxxx年。
突如として降下を始めたアルビオン大陸に、人々は恐怖した。

徐々にその高度を落としていくアルビオン大陸。
それは一直線に、トリスタニアに迫っている。

あれが落ちれば、トリステインだけでなく、ハルケギニア大陸そのものが多大な被害を受ける。

止める術を持たないハルケギニアの民は絶望し、ただただ始祖へと祈りをささげる。

そこへ!
ある一人の僧侶が立ちあがった!

トリステインの宰相にして、ブリミル教の敬虔な信者!
マザリーニ枢機卿、その人であった!

生れ落ちてより四十余年。
一日も欠かさず始祖像の前に跪き、毎日千回頭を打ち付けていたマザリーニ。
その彼に、始祖ブリミルは、ある力を授けたのだった!

誰にも打ち明けることのなかった、恐るべき力。
ハルケギニアの危機に、マザリーニは、今―――――解き放つ!



「強力招来!!!」





その2


Gブレスによりアルビオン大陸破壊に成功したマザリーニ。
その後、彼は何故アルビオン大陸が下降してきたかの謎を追った。

十数年の時を経て、マザリーニついにその真相を掴んだ。
それはある一人の行いによるものだった。

嗚呼―――しかし何ということか。
マザリーニが目にした真実は、彼にとってあまりにも辛いものだった。

神よ!何故私にこのようなものを見せたのか!?

嘆くマザリーニ。
しかし、その声は神には届かない。

敬虔な信徒であるマザリーニの声すらも、神であるブリミルに届かない理由。
それこそが、マザリーニが見つけた真実だったのだ!

アルビオン大陸墜落を行った者。
それはマザリーニが信じていた、そのものであった!

そう―――――始祖ブリミルの手によるものだったのだ!

マザリーニの慟哭は、万里を超え、ハルケギニア中に届いた。

三日三晩泣き続けたマザリーニ。
ついに彼が立ち上がった時。
その顔には決意が滲み出ていた。

マザリーニは天に向かって拳を突き上げる!



「ハルケギニアは、私が守る!」





その3


マザリーニの言葉は、即ちブリミルとの開戦を意味していた。
諸国の王侯貴族はこぞって反対し、中にはマザリーニを打ち首にしてしまえという者も出てきた。

四面楚歌状態になったマザリーニ。
トリステイン宰相の座も剥奪され、泥にまみれながらもブリミルに対する思いは変わらない。

どれほど人々に嫌われようとも、ハルケギニアの民は私が守る!

マザリーニはそう心に決めた。
しかし現実は非情だった。

物乞いの真似をしてまで生き延びていたマザリーニ。
既に絶頂期を過ぎた彼の体には、その生活はあまりにも苦しかった。
マザリーニの命は、今にも尽きようとしている。

さらに、そこへ追い討ちをかけるような出来事が!

なんと!
森の奥深くで倒れているマザリーニの前にある人影が現れた!

気配に気づいたマザリーニは、何とか顔を上げる。
そして自分に対して、その人物が名乗った名に―――驚愕した。

それは自分が始祖ブリミルだと名乗った!

そしてそいつはこう言った!!

―――――今、トリステインを滅ぼしてきた。

激昂するマザリーニ!
彼は最後の力を振り絞り、立ち上がる!
射殺さんばかりにブリミルを睨みつけたマザリーニは、血を吐くような声で訴えた!



「ブリミルよ! あなたは、今!! 再び私の心を裏切った!!!」





その4


かつては自身の信仰の対象。
今はこの世でもっとも憎い相手。

マザリーニはブリミルへ向かって、一歩足を進める。
力が入らない体に鞭を打ち、マザリーニは己の力を解放した。

―――始祖より与えられたと思っていた力を、よもやその本人に向けることになるとは!!

マザリーニは血の涙を流しながらブリミルに攻撃を加える。
Gブレス。Gプレッシャー。神千手砲。
アルビオンを破壊したとき以上の威力のそれらが、ブリミル一人へと向けられた。

しばらく後、半径100リーグ一帯は更地となった。
おおよそ一人の人間には為し得ない圧倒的な破壊。

―――――だがしかし!!!

何と! 何と!! 何と!!!

彼の目の前には傷一つないブリミルの姿あった!
マザリーニによる攻撃の数々は、ブリミルには何一つ通用しなかったのだ!!

絶望に落とされ、倒れこむマザリーニ。
もはや彼には起き上がるだけの力もない。

しかしマザリーニは諦めない。
ハルケギニアの全てを守るため、ここで朽ち果てるわけにはいかない!

マザリーニの体が輝きだす。
マザリーニは命を燃やし己の力としたのだ!

―――――勝っても負けても、終わった後はおそらく生きてはいられまい。
だがそれでも―――――!!!

一際大きく輝くマザリーニの体。
その光が収まった後見えたのは、黒い不気味な鎧を身に着けたマザリーニの姿だった!

マザリーニはブリミルを睨み付け、己に活を入れる!


覚  悟  完  了



「我が身すでに不退転」





その5


己の命を燃やし尽くすかのように、マザリーニは怒濤の攻勢に出る。

拳を突き出すごとに体中から溢れ出す血。
蹴りを放つごとに砕けていく骨。

自信の体を全く顧みないそれは、確かにマザリーニ命を削っていった。

しかし―――――現実とは何と残酷なことか!?
マザリーニの命を懸けた足掻きすらもブリミルを倒すには至らなかった!!

満身創痍のマザリーニ。
もう指一本すらも動かせそうにない。

死に体のマザリーニに向かって、ブリミルが一歩足を踏み出す。
今のマザリーニには、止めを刺そうとするブリミルに抗う術はない。

これまでか、とマザリーニが諦めかけたそのとき―――!

“まだ終わりではない!”

マザリーニの耳に奇跡の声が届いた!

ひどく痛む体を何とか動かし、辺りを見回したマザリーニは、その光景に目を見開いた。

ガリア、ゲルマニア、僅かに生き残っていたアルビオンとトリステイン、そして何とロマリアの旗までもが見える。
ハルケギニア中の軍がここに集結していたのだ!!

“マザリーニ万歳! マザリーニ万歳!”

すべての人がマザリーニを称える。
その声援に押されるようにして立ち上がったマザリーニの目からは、知らず知らずのうちに涙が流れていた。

ハルケギニアに住む全ての人々の気持ちを胸に、マザリーニは雄叫びをあげる!!!



「アッララララ―――――イッ!!!!!」






その6


マザリーニの号令とともに、ありとあらゆる手段による攻撃が始まった。

何万、何十万という人々がブリミルに己の持つ力の全てをぶつける。
雨霰のように繰り出されるそれらは、確実にブリミルを疲弊させていった。

これならば勝てる!!

誰もが自分たちの勝利を信じ始めたとき。
突如ブリミルの体が光り、全ての者の目を眩ませた。

光が収まった後、先ほどまでブリミルが居たはずの場所には何もなかった。
マザリーニは急いでブリミルを探し出す。

周りには大勢のハルケギニアの民。
地面は掘り返した様子もなく、空には大きな月が一つ輝いている。

逃げたのか? と全員が考え、辺りがざわめき始めたとき、マザリーニは違和感を感じ空を仰いだ。

月が一つだと―――!?

ハルケギニアの月は二つ。
しかし今は一つしか見えず、更にその大きさはマザリーニの記憶にあるものの五倍はあった。
しかもその大きさは増してきている。

マザリーニの頬に冷や汗が流れる。
まさか、まさか、まさか!?

マザリーニの直感が、早くここから逃げなければならないと警報を出していた!

マザリーニが何かを言おうと口を開きかけた次の瞬間!
その場の全員の頭に、ブリミルの声が響いた!!

―――月落としだッ!!!―――

絶望の宣告。

誰もが諦めかけたとき!
ただ一人!マザリーニだけは諦めてはいなかった!!



「私をなめるなブリミルッ!!」





その7


圧倒的質量による全地上の壊滅。
それを間近にした人間たちを眼下にしたブリミル。
彼は月の裏で笑みを浮かべた。

しかし!
マザリーニは諦めない!

黒い鎧のバーニアをふかし飛び立つマザリーニ。
向かう先は今も尚落ちてくる月。

なんと―――彼は月を受け止めることを選択したのだ!!

地上何万メートルかも分からないほどの遥か上空。
マザリーニは月に手を添えた。
両手を突っ張り、渾身の力を込める!

―――しかし、月はその動きを微塵も緩めない。

人間では自然には抗えない。
マザリーニの脳裏に一瞬“諦め”の文字がちらつく。

だが! だが!! だが!!!

自分の真下には数多くの命がある!
守ると誓った命が!!

もはや死力を尽くすといった言葉でも足りない程に力を振り絞る。
体中の骨という骨が砕け、いたる所から血を噴出す。

生きているのが不思議な状態。

それでも!

それでもマザリーニは―――――!!!



「あの誓いは伊達ではないッ!!!」





その8


マザリーニの決意は奇跡を起こした。
なんと、月が少しずつ押しもどされ始めたのだ!

予想外の事態に狼狽するブリミル。
とうとう月は元の位置まで押し戻されてしまった。

マザリーニの意識は、それを確認した直後遠退き始める。
ブリミルは考えた。

―――こいつはここで始末しなくてはならない!

重力に引かれ徐々に地上に向かっていくマザリーニの体。
このまま放っておけば自然と死んでくれるだろう。

しかし、ブリミルは自身の手で止めを刺さなければ安心できなかった。

如何に始祖であるこの身といえど、この高さから地上に激突すれば死は免れない。
マザリーニに一撃で止めを刺し、重力にとらわれる前に離脱する。

そう考えマザリーニに素早く近づいた。

だが! なんとしたことか!!

マザリーニはまだ意識を保っていたのだ!!!

マザリーニは自身の目の前にあるブリミルのからだを抱き締める。
ブリミルはその拘束を解こうと暴れるが、マザリーニの腕はピクリともしなかった。

まずい! まずい!! まずい!!!

焦りが思考を埋め尽くす中、眼前のマザリーニの口元が円を描く。



「ブリミルよ、どこに落ちたい?」





その9


月が元の位置に戻ったことを見た地上。
そこにいる人間たちは歓喜の声を上げた。
あとはマザリーニの帰りを待つのみである。

彼が帰ってきたら何と礼を言おうか?

まずはパーティをしよう。

パレードも行おう。

いや、その前に謝らなければならない。

そうだ私たちは彼を貶めた。

早く帰ってきてくれ。

早く。

早く早く。

早く早く早く。

その場に存在するあらゆる者がマザリーニの帰還を待つ。
そんな中、一人の小さな少女が空を見上げた。

彼女の目に映るのは、願いを叶えてくれるもの。
少女は思わず喜びの声を上げた。



「あ、流れ星!」





その10


声にならない悲鳴を上げ飛び起きる。
目に入ったのは見慣れた自室。

マザリーニは大きく息を吐く。
額に浮かんだ汗をぬぐい―――一言。










「夢か……」


問答無用に












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